ベトナムにおけるエネルギー変革と持続可能性への取り組み

第8次国家電力開発基本計画(PDP8)の概要

ベトナム政府は、2050年のカーボンニュートラルを目指し、再生可能エネルギーへの大規模な転換を計画しています。

 

2023年に発表された第8次国家電力開発基本計画(PDP8)では、2030年と2050年の再生可能エネルギー目標が設定されています。

電力構成と目標 ベトナム政府の政策
2022 石炭火力: 32.5%
再エネ: 26.7%
水力: 29.0%
2030 再生可能エネルギー比率: 30.9~39.2% (水力除く) 1) 新たな石炭火力発電所の開発停止
2) 20年経過した石炭火力発電所はバイオマス・グリーンアンモニア燃焼へ転換
3) 40年を超えた発電所は停止(燃料転換不可能な場合)
2050 再生可能エネルギー比率: 約70% (水力を除く)

 

 

再生可能エネルギーへの転換と石炭火力発電所の撤廃

本計画は、再生可能エネルギー源の使用量を高め、石炭火力発電の削減を進めることを目的にしています。

 

石炭火力発電所の今後の方針として、新規建設の停止や既存の発電所のバイオマスへの転換が推進されます。

 

加水分解技術とブラックペレットの革新

加水分解技術とは?

加水分解技術は、有機物質(主にバイオマスや可燃性の廃棄物)を高温・高圧の水蒸気環境下で処理する技術です。本プロセスは、有機物質の化学構造を変化させ、破砕性を向上させ、発熱量を高めることを目的としています。

 

プロセス

加水分解では、バイオマスや廃棄物を反応器に入れ、温度220~230°C、圧力25~30気圧の飽和水蒸気を供給して、約30分間反応させます。

 

すると、バイオマスの細胞構造が破壊され、内部の水分が放出されるため、乾燥が容易となり、同時に、酸素と水素の含有量が減少するため、より発熱量の高い、石炭に似た物質へと転換されます。

 

メリット

  • 発熱量の向上: 加水分解により、バイオマスの発熱量が増加し、燃料としての価値が向上。
  • 環境への影響の低減: カーボンニュートラルな固体燃料の製造が可能で、石炭の使用量を減らすことが可能。
  • 廃棄物の有効活用: 廃棄物を石炭代替燃料に変換することで、廃棄物処理の問題を解決し、資源循環を促進。

加水分解の技術の活用

  • ブラックペレットの製造。
  • 石炭火力発電所での燃料としての利用。
  • 廃棄物の有効利用の促進。

 

ブラックペレットの重要性

ブラックペレットとは?

ブラックペレットは、加水分解技術を用いて製造される石炭代替燃料です。

 

通常のバイオマスペレット(ホワイトペレット)と比較して、より高い発熱量を持ち、破砕性に優れているため、石炭火力発電所の石炭供給設備の改造が不要です。

 

また、EFBなどの、ボイラで灰付着を誘発するアルカリ金属(カリウム等)の含有量の高いバイオマスから、低アルカリ金属含有の燃料を製造することも可能です。

 

製造プロセス

ブラックペレットの製造にあたっては、破砕や乾燥等の前処理なしで、バイオマスを高温・高圧の水蒸気下で加水分解処理します。

 

加水分解処理生成物は、容易に乾燥可能な破砕された状態となり、ある程度含水率が落ちたところで、ペレット化及び乾燥させます。

 

この処理により、バイオマスは水熱炭化され、石炭に似た特性を持つペレットに転換されます。

 

特徴とメリット

  • 高発熱量: 石炭に近い高発熱量を持ち、燃料として効率的に使用可能。
  • 高破砕性:石炭に近い破砕性を持ち、既設のミルで石炭といっしょに破砕可能
  • 高乾燥性: 乾燥しやすく、保管や輸送が容易。
  • 低アルカリ金属含有:アルカリ金属濃度が低い燃料に転換可能。
  • 低塩素含有:塩素濃度が低い燃料に転換可能。

 

使用用途

・石炭火力発電所での混焼: 石炭火力発電所での石炭との混焼に利用することで、CO2排出量の削減が可能。

 

・持続可能な燃料: 再生可能エネルギー源として、石炭に依存する国々でのエネルギー転換を行うことが可能。

 

加水分解技術とブラックペレットの組み合わせは、持続可能なエネルギー供給に向けた重要な取り組みと考えられます。

 

これらの技術は、環境への影響を減らし、エネルギー効率を高め、カーボンニュートラルの課題解決に貢献することが可能です。

ベトナムにおける実証実験

加水分解技術を用いたブラックペレット製造の研究

弊社、上席研究員吉川博士の研究により、EFBに加水分解技術を適用することで、カリウム等のアルカリ金属含有量が低いブラックペレットの製造が実証され、石炭に匹敵する品質のペレットの生産が可能となりました。

 

この技術により製造されたブラックペレットは、石炭火力発電所での石炭混焼に使用することで、CO2排出量の大幅な削減に貢献します。

 

未来への展望と持続可能な開発

連続式加水分解反応器の重要性

これまでの加水分解反応器は、原料の投入高圧水蒸気の供給à高圧水蒸気の排出生成物の抜き出しという工程を繰り返すバッチ運転でしたが、大量のブラックペレット製造のためには、高圧下での反応器に原料を供給し、圧力を下げずに生成物が抜き出せる連続式の加水分解反応器の開発が必要です。

 

これにより、より大規模な廃棄物処理が可能になり、ブラックペレットの製造効率が向上されます。

 

ベトナムにおけるエネルギー政策と持続可能な成長

ベトナム政府は、再生可能エネルギーと持続可能な廃棄物処理技術の採用により、経済成長と環境保護を両立させることを目標としています。

 

加水分解技術とブラックペレットの利用は、この目標達成に大きく貢献するものと期待されます。

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